極甘上司に愛されてます
「……アイツら、みんなこないだのお前の企画に感謝してるんだ」
「あ……確かに理恵さんには、お礼言われました。でも、佐藤さんも?」
「ああ。夫婦間での悩みが少し軽くなったってな」
私のやったことが、色々な人に影響を与えている……それを、こんなに身近で感じることができるなんて、私は幸せ者だな。
「……あとな。俺も、救われた人間のうちの一人なんだ」
編集長が、そう言って優しく微笑む。
「救われた……?」
「……ああ。こないだ、実家の親から電話があってな……今まですれ違ってたこと、色々解決できたんだ。
お前の記事を読んで、自分たちのことを見つめ直すことができたって言ってた」
「……じゃあ、もしかして、お嫁さんは“専業主婦に”っていうあれも……?」
……ずっと心に引っかかっていた。
編集長とこれからもずっと一緒にいるっていうことは、いつかご両親に挨拶をするはずで。
もちろん彼と留美さんが壊れてしまったときのようになるつもりはなかったけど、私も同じことを言われたとしたら、心がどれくらいのダメージを負うか、心配だったから……
「……お前、知ってたのか」
驚いた表情の彼に、私はうなずいた。
「はい。留美さんと、菊治さんに聞いたことがあって……」
「菊爺……か。まったく、あの人にはいつまでも頭が上がらねぇな。実は、俺の実家はウチの新聞の配達区域には入ってねぇんだ。なのに北見の書いたあの記事を知ってるのはどうしてかって聞いたら、母親が言ってた。
“お向かいの斉藤さんが持ってきた”――ってな」