極甘上司に愛されてます
チャペルを出ると、式場の人たちにお礼を言うためにサロンに寄った私たち。
そこには取材の日に私たちを案内してくれたプランナーさんがいて、「やっぱり、お二人は上手くいくと思ったんです!」なんて言いながら感激していて、なんだか照れくさくて、でも幸せだった。
私たちが結ばれたのは、何人の人の協力のおかげなんだろう……
帰り道の途中、澄んだ夜空の星を見ながら考えていると、いつもお世話になっているたくさんの人の顔が星座のように浮かんで、私の心を温かくする。
でも……心が満たされいる反面、なんだかお腹がすいてきた。
「と……編集長」
白い息を吐き出しながら、隣の彼に話しかける。
……やっぱりまだ、こういう何気ない瞬間には透吾って呼べないんだよね……
「……お前な。言いかけたのにやめんなよ。……で、なんだ?」
「お腹、すきません?」
「ああ……やっぱそうだよな。どうする? 何か食いに行くか?」
今からどこかに行っても、ちょっと良いところだったらそれこそ入店を拒まれそうな微妙な時間。
だからって、イブにファミレスとかは切ないし……
「あの、お家のキッチン借りられれば、何か作ります」
「……いいのか? 仕事と猫探しで疲れてるのに」
「料理は好きなので、全然平気です。何かリクエストありますか?」
「肉」
あまりに単純すぎる答えが返ってきて、思わず私はふっと笑ってしまった。
……にく、だって。子供みたい。
そういえば、昔は悪ガキだったんだもんね。
でっかい骨付きステーキでも焼いてあげたら喜ぶだろうか。
「……笑ってる場合か? お前も食われんだぞ、デザートに」
「……! か、覚悟してます……」
「じゃあちょっと味見――――」