極甘上司に愛されてます
身を屈めた彼の体に視界がふさがれて、目の前が暗くなる。そして、立ち止まるや否や、唇に柔らかいものが触れた。
この人はまた……外でも平気で、キス、するんだから……
ちゅ、と短いリップ音を立てて唇が離れて行くと、私は彼をにらんで言う。
「つまみ食いする人には、デザートなしですよ」
「……! ちょっと待て、それは困る」
「じゃあ我慢できますね?」
「……仕方ねーな」
舌打ちが聞こえてきそうな表情でそう言った彼は、早く買う物買って帰ろうぜ、と言う空気を醸し出しながら、歩く速度を速める。
またもや子供みたいになってしまった彼の隣でクスクス笑っていると、ふいに編集長のいる方から携帯が鳴る音がして、彼がポケットからスマホを出した。
「……嫌な予感がすんな」
「嫌な予感……?」
画面を覗き込んで眉根を寄せる彼を、私はきょとんと見上げる。
「ああ……でも、無視するわけにもいかねーから、出るぞ」
「……? はい、どうぞ」
一体誰からの電話なんだろう?
あまり嬉しくない相手からみたいだけど……
電話に出る彼の様子を不安げに見守っていると、いくつかの短い返事で通話を終わらせた彼が、疲れたような声で私に告げる。
「……本物のキャサリンが、いなくなったらしい」
「え……ま、まさか……」