極甘上司に愛されてます
「……つーわけで。どうやらメシも亜子も心置きなく食えることになったみたいだ」
「よ、よかったぁ……って。違いますよ!? い、今のは、“メシ”に反応しただけです!」
「……ばーか。そこまで必死の否定は逆効果だ」
「編集長の意地悪……!」
きっと、他人が聞いたら、色気もないし、くだらない会話。
……だけどね。
恋に落ちた者同士にとっては、どんな会話もロマンチック。
自分たちのことを、まるで恋愛映画の主人公か何かと錯覚しているみたいに、お互いのことしか見えなくて。
「……男っつーのは、好きな女に意地悪くなる生き物なんだよ。ベッドの中でのことも含めて、な」
べ、と舌を出した彼にむっとした表情をして見せてみても……結局最後は、笑顔に戻る。
こんな何気ないやり取りが今は何より大切で、これからもっともっと、そんな時間を二人で重ねて行きたい。
「意地悪もいいですけど、明日の仕事に影響しない程度にお願いしますね……?」
「……さぁな。お前の乱れ方による」
「み、乱れ方って……!」
「……まぁ、とりあえず目覚まし二つ掛けとけば朝は起きれるだろ。……それとも、仕事のことが心配だからこのまま別々に帰るか?」
……今夜はイブでも、明日も朝から仕事。
私たちが生きているのは、そんな現実を無視するわけにはいかない、大人の世界。
今は、明日の仕事を憂鬱に思ってしまうけれど。
それでも朝が来たら、私たちは会社に行くんだ。
「……嫌。今夜は透吾といる。明日もちゃんと起きる」
「……よし。それでこそ北見亜子」
いつか辿り着きたい、“両立”への道のりはきっと、平坦なものではないけれど。
隣のあなたと手を繋いで、そこに生まれるパワーを信じたいからーー
私たちは毎日、一所懸命働く。
必死で、恋をする。
恋と仕事は両立できますか?
end