極甘上司に愛されてます
【番外編】 バレンタインの夜
二月十四日の朝、元気よく編集部に出勤してみると、先に来ていた先輩たちがすでにチョコレートの交換をしていた。
私は自分の席に荷物を置いて、その輪の中にさっそく飛び込む。
「おはようございます。早速やってますね」
「おはよう亜子ちゃん。ハイこれ。恋占いつきチョコ~」
「あはは、さすが先輩。私の趣味をよく御存じで……」
買ったものでも手作りでも、こうして楽しくチョコを交換するのが編集部の恒例行事らしい。
ちなみに私のは手作りで、ラッピングにまで凝ってしまったからちょっと寝不足。
でも、みんなでワイワイできるのが楽しいからいいんだけどね。
そんなことを思いながら、手作りチョコを配っていると。
「……誰か助けてくれ。前が見えねぇ」
両手いっぱいに、チョコレートが入ってるのであろう箱や袋を抱えた編集長がオフィスに入ってきた。
「わー、朝から大漁ですね!」
「こないだの記事効果すごいですねぇ」
そんなことを言いながら、先輩たちが彼の手からいくつかの荷物を受け取ってあげていた。
私も手伝ってあげようかと思わなくもなかったけど、内心複雑だったので気づかない振りをしてしまった。
「……妬いてる妬いてる」
そんな私の耳元で、急にそんな言葉がささやかれてびくっと後ろを振り返ると、黒い笑顔を浮かべて立っていたのは理恵さんだ。
うう……私の心が読まれている。