極甘上司に愛されてます
「……だって、あんなにいっぱいもらってるんですよ? 彼の性格上断るのは無理だとわかってても、彼女としては面白くないじゃないですか」
ぶすっとしてそう言うと、理恵さんが私のデスクの上にあった、先月発行された分の新聞を手に取り、それを眺めながら言う。
「うまく撮れてるものね~この写真。私は別に編集長のこと好みでも何でもないけど、客観的に見てやっぱりイケメンだもの」
「……それを、この地区一帯の女性の皆さんが知ってしまったわけですよね……」
理恵さんから新聞を渡され、私もそこに載る記事をじっと見つめた。
先月の特集は、何を隠そうこの編集部への潜入取材。そして、どうやって記事ができるのか、その過程を追っていくというものだった。
そして、その締めくくりとして編集長へのインタビューと、それから彼がデスクで仕事に精を出す姿の写真が載っている。
彼女の私が言うのもなんだけど、編集長はものすごくカッコよく写っていて、新聞が発行されるとたちまち彼への激励の手紙やメール、それに贈り物などが送られてくるようになってしまった。
本人は『盛り上がってんのも今だけで、そのうちすぐ飽きるだろ』と大して気に留めてない様子だけど、私はハラハラしっぱなしだ。
だって、付き合い始めて四カ月余りが経つ今でも、毎日のように思うもん……編集長は、私なんかにはもったいない素敵な男性だなって。
「……どうせ今夜は一緒に過ごすんでしょ? 存分に可愛がってもらいなさい」
「その予定ですけど……私が素直になれるかどうか……」
うじうじといじけた態度でそう言うと、理恵さんは面倒臭そうにため息をつき、さっさと営業部の方へ戻ってしまった。
はぁ……そうだ。私もそろそろ仕事。
気持ちを切り替えるようにそう思うと、先輩たちにもらったチョコのうちのひとつを適当に手に取って開封し、ひとつぶ口に入れる。
この甘さに元気をもらって、今日も一日頑張ろう。
そんなことを思いながらチョコを舌の上で溶かすと、私はデスクに向かって業務に取り掛かるのだった。