極甘上司に愛されてます
「……そういうことなら構いませんけど。ただ、石神室長が受け取ってくれるかわかりません。それでもいいなら」
「はい! ありがとうございます!」
ぺこっとお辞儀をして、うれしそうに去って行った女性。
私たちはしばし呆然とその後ろ姿を見つめていたけど、しばらくすると編集長が持っていた箱で私の頭をパコっと軽く叩いた。
「痛っ」
「……ヤキモチ妬き」
思わず見上げた先の彼は、とっても意地の悪い笑顔。
「う……確かにそうですけど。だって、あまりにチョコもらいすぎてるから……」
叩かれたところを押さえながら伏し目がちに言うと、なんだそんなことかという風に、彼がふっと息を漏らす。
「あれは編集部の皆で山分けだ。一人であんなに食えるわけもないし」
「……いいんですか? それで。お手紙とか入ってるかもしれないのに」
「いいんだよ。俺が欲しいのはひとつだけだから。……しかし朝からずっと待ってんだけど、まだもらえねぇんだよな」
とぼけたように頭を掻きながら言った編集長。
それって、もしかしてチョコの催促……?
冗談交じりのその言い方が、意地っ張りな私の頃を溶かしていく。
「ちゃんと、ありますよ。……でも、食べる直前に温めたいから、おうちに帰ってからのお楽しみです」
そう言って彼を見上げると、感心したように彼が頷く。
「……へえ。そりゃ楽しみだな。じゃあさっさと仕事終わらせてくる。お前はこれ、室長に渡しといてくれ」
「えっ」