極甘上司に愛されてます


編集長はしばらく瞬きを繰り返した後で、「ああ、ええと……」と言いながら、宙をにらんで記憶をたどる。


「二十六……でしたかね。たぶん」


その答えに、室長は少し残念そうに言った。


「そうですか……では、ドローですね」


ドロー……ってことは、室長も同じ数もらったんだ。
それにしても二十六個って。さすがうちの社の二大イケメンだなぁ……。


「あ、待って下さい、室長にはもうひとつあるんです」


編集長が思い出したようにそう言って、彼に箱を差し出す。


「さっき、ここに来た若い女性が……石神室長にって」


……と、いうより。編集長がダメだったときの、第二希望みたいな感じだったけど。

口には出さないものの、私がそんなことを思っていると、編集長からチョコを受け取った室長がほんの少しだけ口角を上げた。


「どうもありがとう。……では。私はこれで」


それだけ言うと、くるりと身体の向きを変え、今度こそ私たちのもとを離れていく室長。


「……嬉しそうだな」

「ですね」

「亜子からもらう分入れなかったから、結局ドローなんだけどな」

「あ、そっか。……いいんじゃないですか? それは内緒にしといて」

「……だな」


苦笑した編集長につられるようにして、私もふふっと笑う。

誰だって、やっぱりバレンタインは、色々期待しちゃうものだよね。

私たちにとっては、どんな夜になるかな――。



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