極甘上司に愛されてます


「どうぞ、ここに座って下さい」

「あ、あの、これ、先生のお好きな三日月堂の……」

「ああ、ありがとう。あとで頂くよ」


通された応接間らしい畳の部屋で、座布団の上に正座しながら先生と向かい合うと、とにかく早く話を切り出してしまおうと、私は口を開いた。


「あの、前回お邪魔させていただいた時にも一度申し上げましたが、今一度先生にお詫びがしたくて今日は参りました。
先生の作品の写真を上下逆の状態で掲載してしまったこと、本当に申し訳ありませんでした……」


畳に手をついて、深く頭を下げた。そのまま先生の反応を待っていると、彼は優しい声色で言う。


「北見さん……だったかな? 頭を上げて?」


ゆっくりと顔を上げると、先生はやっぱりにこにこと微笑んでいた。


「前も言った通り、僕の腕が未熟だというのもあるから、そんなに気にしないで欲しいな。でも、もしどうしても君の気が済まないって言うなら……」


彼が言いかけたとき、開けっ放しになっていた襖からトトッと軽やかな足取りで、一匹の黒猫が部屋に入ってきた。

猫は先生に懐いている様子で、彼の膝の上に乗ると落ち着いて身体を丸めた。

前回は見かけなかったけど、猫なんて飼ってたんだ、先生。

大事な絵にイタズラされたりしないのかな……そう思いながら、ぼんやりと猫の艶やかな毛並みを見つめていると。


「僕の絵のモデルにならない?」

「え……?」


絵の、モデル……?


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