極甘上司に愛されてます
小林先生が描くのは、主に抽象画のはずだけど……それに第一、私はモデルにしてもらえるような容姿は持ち合わせていない。
「あ、あの……たぶん私ではお役にたてないんじゃないかと……」
「そうかな? 見てみないとわからないよ。さ、こっちに」
まさか、本気? ……ていうか、“見てみないと”ってなに?
ことの成り行きが飲みこめない私をよそに、先生は猫を膝から下ろすと、テーブルの反対側からこちらに回ってきて私の腕をつかんだ。
「先生……?」
「鈍い子だな。さっきのは口説き文句だよ。ほら、寝室へ行こう。僕の絵のモデルとして相応しいかどうか、きみの全部を見せてごらん?」
口説き文句……寝室……全部見せる……? それってまさか――。
瞬時に危険を察知した私は、愛想笑いを浮かべてできるだけ柔らかく言う。
「あの……仕事、まだあるの忘れてました。社に戻らないと……」
けれど先生はそんな嘘なんてものともせずに、いやにセクシーな声でささやく。
「……その仕事って、僕より重要なことなの?」
ぞわっと、全身に鳥肌が立つ。
小林先生は確かにカッコイイ人だし、才能にあふれてるし、実際モテるんだろうけど……それとこれとは別!
私はそんな手を使って許してもらいたくなんてありません……!
「離してくださ……っ」
彼の手を無理矢理振りほどこうとしても女の力ではどうしようもなく、むしろ掴まれている手首がどんどん痛くなってくる。