極甘上司に愛されてます
ほどなく玄関の鍵が開いた音がして、勢いよく開いたドア。
そこから出てきた男の子と女の子が、飛びつくようにして編集長の持つケージを覗いた。
「ホントだ! キャサリンだ! どこ行ってたんだよもう~!」
兄妹のお兄ちゃんと思われる、十歳くらいの子が大声で言う。
「おかえりー! すぐゴハンあげるからねっ」
六歳くらいの女の子は、そう言いながら小さな指をケージに差し込んでキャサリンに触れている。
そんな彼らの姿を満足そうに見つめていた編集長は、しばらくするとお兄ちゃんにケージを手渡して言った。
「……よかったな。まぁまた逃げたら電話くれ。俺の名刺、まだ持ってるだろ?」
「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
お兄ちゃんがお礼を言うと、妹もそれにならうようにしてぺこりとお辞儀をした。
礼儀正しい兄妹だなぁ……私がこの子たちくらいの時、こんな風にできたっけ?
大人の人にお礼とか、妙に緊張しちゃって、親に無理矢理頭をぐいって下げられて強制的にしてたような記憶が……
そこまで考えたところで、ふと気になった。
この子たちの親御さんがいつまで経っても現れないけど、どうしてかな? 一言くらい挨拶があってもいいような気がするけど……
そう思いながら私が開け放たれた玄関の奥に目を向けていると、編集長は言う。
「じゃあさっさと家入れ。きっちり戸締りしろよ?」
そしてあっさりと兄妹に背を向けてしまうので、私も二人に手を振ってから、慌ててその後を追った。