極甘上司に愛されてます
「あ、あの……あの子たちのお家の人は?」
バス停に戻る途中、編集長の大股に合せてせかせかと歩きながら、私は質問した。
「まだ帰ってない。共働きで二人とも遅いんらしいだ、あの子らの両親」
「あ。そうだったんですか……」
頷きながら、自分の腕時計を見る。
もうすぐ午後七時になるけど、子供二人でお留守番なんて寂しいだろうな……
「……だから。猫一匹でもあの兄妹にとってはいなくなったら困る大切な家族だろうと思ってな……業務の範囲外であることはわかってたが、無視はできなかったんだ」
「なるほど……」
……優しい編集長らしい。
菊治さんは悪ガキ悪ガキって言っていたけど、やっぱりそういうところは尊敬できる人だ。
結婚したら不幸になるだなんて、私は逆だと思うな。
…となると。さっきも気になったけど、編集長ってどうしてフリーなんだろう。
私みたいなダメな部下を守ってくれて、子どもに対しても優しくて……そういう性格は、結婚向きな気がするんだけど。
なんて、余計なお世話もいいところか。
自分の思考が恋愛方面に偏ってるの、いい加減どうにかした方がいいかも。
「――そういえば。佐藤さんに聞きました。来月のブライダル特集、私が担当するって……」
「あぁ、あれな。お前好きだろ、そういう女子が喜びそうな話題」
「……皮肉ですか?」
「違ぇよ。素直に期待してるって意味」