極甘上司に愛されてます
「……でも。今日のデートは普通に楽しんでいいんだよな?」
「あ、うん、もちろん! ……私も、少しでも長く一緒にいたいし……」
……恥ずかしいこと言っちゃった。
だって、自分で決めたこととはいえ週が明けた明日から早速彼との連絡を絶つんだと思うと、どうしても後ろ髪を引かれるような気持になってしまう。
そんな私の気持ちを見透かしたのか、渡部くんが小さなテーブルの向こうから手を伸ばしてきて、私の頬を優しくつねった。
「亜ー子。……今からそんな顔しててどうするんだよ。今日は笑ってて? 俺は亜子の笑顔が好きなの」
「渡部くん……」
きゅうっと胸が鳴って、おもちゃの赤べこみたいに首を何度も縦に振った私。
こんなに思いやりのある人が彼氏なんだもの、不安になる必要なんてない。
テーブルの上の伝票をつかんで席を立った彼の腕にしがみつくと、愛しそうに目を細めた彼に頭をそっと撫でられた。
今日だけは、この幸せに目いっぱい浸っていよう……!
それから私たちはカフェを出て、秋の爽やかな空気を楽しみながら街をぶらぶらと歩いた。
辺りが暗くなってくると早めに私の家に二人で帰り、“しばらく会えない”ということを噛みしめるように、渡部くんは私を大事に大事に抱いてくれた。
「じゃあ、頑張れよ」
「うん、渡部くんもね」
夜遅くにアパートを出て行った彼を、一階まで降りてその背中が見えなくなるまで見送ると、思わずため息がこぼれた。