極甘上司に愛されてます
「ま、いつまでも失敗を引きずっていてもまた新たな失敗を引き起こすだけだものね。編集長のお言葉に甘えて、気持ち切り替えなさい」
「…………はい」
元気のない返事をした私の肩をぽんと叩くと、理恵さんはパンプスのヒールを鳴らして、颯爽とこの場を離れていった。
……理恵さんにはせっかく励ましてもらったけれど、私には気持ちを切り替えられる気なんて全くしない。
もう、私の脳内に咲き乱れているらしい色とりどりの花――そう、恋という名の浮ついた花を、ひとつ残らず引っこ抜いて、さら地にしなきゃダメなんだと思う。
つまり……恋人に別れを告げなきゃならないってことだ。
サヨナラ、私の恋……
北見亜子は、これから仕事一筋のデキる女を目指します……
【今夜、会えますか? 大事な話があります】
腹をくくった私はそうメッセージを打つと、スマホの電源を切って立ち上がった。
給湯室でコーヒー入れ直して、今度こそ仕事に集中しよう。
……あそこは、キスをする場所じゃない。
頑張って働く社員がさらに仕事に精を出せるよう、美味しいコーヒーやお茶を入れる部屋なんだから。