極甘上司に愛されてます
食事中、編集長はすっかり元気を取り戻していつもの彼に戻っていたけど、私は切ない恋愛映画を見たあとのように、なかなかその余韻から抜け出せなかった。
恋愛のことは頭から追い出すって決めたのに、まさか自分のこと以外でこんなに胸が痛くなるとは予想していなかった。
いつも明るく頼りがいがあって優しい上司。
編集長に対して、勝手にそんなイメージが出来上がっていたからかな。
今回のことで、なんだか少し彼の見方が変わった。
「うわぁ……素敵」
「これは立派だな。パイプオルガンも、ステンドグラスも……」
その後、レストランのあった建物からチャペルに移動した私たち。
式場の担当者と一緒にバージンロードの途中に立ち止まり、ステンドグラスから降り注ぐ陽の光にしばらく見惚れる。
「……カメラ貸せ。写真は俺が撮るから、お前は必要なことをメモしとけ。記事のイメージ膨らませながら」
「あ、はい。わかりました」
彼にカメラを渡し、ペンと手帳を手にした私は神聖な雰囲気に包まれるチャペルを一人で奥の祭壇まで進み、振り返って担当者の女性に聞く。
「ここ、何人入れるんですか?」
「百名まで対応しております」
「百人かぁ……」
家族、親戚、同僚、友人……多くの人の前で、一生の愛を誓う。
指輪を交換して、ベールを外されて、誓いのキス……教会式は、やっぱりロマンチックで素敵だな。
いつかは、私も渡部くんと……って、ダメダメ!
彼のことは忘れるのよ亜子。結婚なんてまだとうぶん先の話!
……だけど。
私はちら、と編集長の方へ視線を移動させ、真剣にファインダーを覗くその横顔を見つめる。