極甘上司に愛されてます
確か、結婚して半年で妊娠が判明した幸せいっぱいカップルだ。
結婚してパートナーができることでどんな風に生活が変わったとか、精神的にどんな影響があったとか……家族が増えることへの現在の心境も聞いてみたい。
質問するべきことをピックアップして手帳に書き込んでいると、少しめまいがしたので咄嗟にパタンと手帳を閉じた。
「どうかしたか?」
「いえ……たぶん、文字を書いてちょっと酔っただけで」
「……調子悪いならこのまま家に送るけど」
「大したことないので大丈夫です。まだ会社に戻ってやりたいことたくさんあるので……」
なんか、心なしか喉も痛い……? いや、気のせい気のせい。
このタイミングで風邪なんか引いてたまるもんか。
少し心配そうな編集長の視線には気づかないふりをし、私は自分に“大丈夫”と言い聞かせながら社に戻った。
仕事に入る前に給湯室に行き、眠気覚ましのコーヒーを入れた。
式場で美味しい料理を食べてお腹は満たされているし、取材で少し疲れてるうえちょっと雲行きのアヤシイ今の体調でデスクワークをするのは極めて危険。
「頼りにしてます、カフェイン様々……」
オフィスに戻って席に着いた私は自分のマグカップにぱちんと手を合わせてからコーヒーに口を付けると、今日の取材内容を取りまとめ始める。
すると時々、机の上に置いた花束を見た同僚たちが、これはどうしたのかと聞いてきた。
「……編集長の気まぐれです」
そのたびに私はそう答えていたけど、疲れた時にふと花を見ると不思議とやる気が湧いてきて、集中力も高まるのだった。