極甘上司に愛されてます
「渡部くん……」
心細さからぽつりとその名を呟いて、けれどすぐにふるふると首を横に振った。
風邪くらい、一人で乗り越えられる女にならなきゃ。
そう思った私は、美味しくないお粥をできるだけ胃に流し込んだ。
薬を飲んでベッドに入ると、壁の時計は午後七時過ぎを差していた。
インタビュー、どうだったかな。編集長は、誰に私の仕事をお願いしてくれたんだろう。
家に帰ってから気づいたけれど、今日休んだらこのまま来週の木曜日まで会社は休み。
意図したわけじゃないのに、九月の大型連休と見事にかぶってしまった。
次の出勤日まで仕事の確認ができないのは痛いな……
そんなことを考えていると、頭ががんがんと鈍く痛む。
「……寝よ」
風邪が治れば、妙案も浮かぶかもしれないし……
布団をかぶって目を閉じると、遠くでバイクの走る音が聞こえた。
編集長かなぁ……なんて。
世の中にバイク乗りの人なんて数えきれないくらいいるはずなのに、彼の姿がパッと脳裏に浮かんだ。
最近お世話になりっぱなしだからだよねー……きっと。
私はごろんと寝返りを打って、熱いため息を吐き出す。