極甘上司に愛されてます
「……まだ結構ありそうじゃねぇか、熱。もし元気そうだったら……と思って仕事持ってきてやったけど、大人しく寝てた方がよさそうだな」
「仕事……?」
「ああ、コレ」
ごそごそとズボンのポケットをあさった彼が取り出したのは、小さなスティック。
私たちの仕事でしばしば活躍してくれる、ICレコーダーだ。
これを私の所に持ってきたということは、その中身はもしかして。
「今日のインタビューですか?」
「ああ。お前のことだから連休明けだと不安かと思ってな」
「はい、さっきそのことでちょうど悩んでるところだったんです。ありがとうございま――」
私がその小さな機械を受け取ろうと手を伸ばすと、まるで意地悪するようにひょいとそれを上にあげてしまう編集長。
な、なんで……? 私のために持ってきてくれたんじゃ……
「お前、これ渡したらちゃんと寝ないだろ」
「ね、寝ます! ……ひと通り内容を理解してから」
後半はぼそぼそと小声で言う私に、編集長は呆れた表情で言う。
「順番逆だ。まず寝る、それで回復したらこれを聞く。そうするって約束できなきゃこれは渡せない」
ええぇ……?
まぁでも、ずっと監視されているわけでもないんだし、今は言うことを聞いた振りしておくのが賢明かな。