極甘上司に愛されてます
「……佳子(かこ)?」
マイク越しに呟くと、モニターの向こうの彼女は愛嬌たっぷりに笑って言った。
「お姉ちゃん、今晩泊めてー!」
……やだなぁ、佳子と話をするのって疲れるんだよね。
要領がよくて甘え上手な佳子から見ると、私の性格とか行動はかなりまどろっこしいらしい。
だから一緒に住んでいる頃はよくばかにされたり嫌味を言われたりして喧嘩が絶えなかった。
私自身、奔放な佳子が羨ましかったからよけいに反発したりして……
でも、もうお互い大人なんだし平気かな。こうして私を頼って来たということは、佳子が私を姉として慕ってくれている証拠だし。
「……どうしたの急に。佳子がうちに来るなんて、引っ越し手伝ってもらって以来初めて――」
「お姉ちゃん! 頼みがあるの!」
玄関を開けるなり、私の言葉を遮るようにそう言って両手を合わせた佳子。
……前言撤回。私を慕ってるわけじゃなくて、利用しにきたんだこの子。
そう悟った私はため息をつきつつ、仕方なく妹を部屋に招き入れた。
「……で。その頼みっていうのはなんなの?」
背負っていたリュックを部屋の真ん中にどすんと下ろした佳子の背中に問いかける。
「お姉ちゃん、今夜ヒマ? ヒマだよね、彼氏いないだろうし」
「……失礼な。私だって彼氏くらいいます」
「ええっ!? どんな人? どこの会社? 年収は?」
至近距離で質問攻めを浴びせてくる佳子の体をそっと押し戻して、私は腕組みをした。
私に彼氏がいたってそんなに驚くことないでしょうが。失礼しちゃう。