極甘上司に愛されてます
ぶんぶんと頭を振って脳内に浮かんだ顔をかき消していると、佳子がさもいいことを思いついたかのように言った。
「お姉ちゃん、彼氏さんに行ってもいいか聞いてみてよ。人数合わせだから、ご飯食べるだけって言ってさ」
「……あ、それは無理。今連絡取ってないの」
「は? なにそれ」
怪訝そうに佳子が眉をひそめる。
「今、すごく大事な仕事抱えてるから、それが終わるまでは彼との連絡絶ってるの」
私が言うと、じとっとした佳子の視線を感じた。
……どうせ“ワケわかんない”とか思われてるんだろう。別にいいけどね。
佳子と私は違う。だから、無理して理解してほしいとは思わないもん。
「……お姉ちゃん、絶対変。けどさ、それならちょうどいいじゃん」
「ちょうどいい?」
「彼氏さんに相談せずに合コン行けるってこと!」
「いやいやいやいや、なんでそうなる――」
笑って一蹴しようとしたら、つかつかと部屋を横切った妹はクローゼットを開けて腰に手を当てなぜか仁王立ち。
「まずは服選び! 次はメイク! さっさと準備して行くよ!」
「佳子、人の話を……」
「ぜええったい素敵な大人メンズゲットして見せるんだから!」
だめだ、全然聞いてない……
我が家の天井に向かって気合を入れる妹に脱力しつつ、観念した私は渋々出かける支度をし始める。
無愛想にご飯ばっかり食べてよう……
そんな作戦を立てながら、会社に行くときには着ない総レースの白ワンピースに袖を通して肩にカーデを掛け、いちおう合コンっぽさを意識したコーディネートが出来上がった。