極甘上司に愛されてます
「よく言われるんです! ね、お姉ちゃん」
「……いつ言われたのよ」
歓喜の表情で同意を求めてくる妹に対し冷めた口調でそう返すと、向かい側で低い笑い声三種類がハモる。
うーん……ノリは確かに大学生の合コンとは違うけど、やっぱり苦手だ、こういうの。
気まずさからドリンクメニューに手を伸ばし、「何飲む?」と女子側のみんなに尋ねる。
すぐに各々の頼むお酒は決まったけれど、まだ一人男の人が来ていない。
ちょうど私の向かい側が空席のままで、けれどお箸やおしぼりが置いてあるからには来る予定はあるらしい。
「アイツ、遅いな」
「つーか来なくていいだろ。絶対女の子たちみんなアイツ狙いになるから」
「確かに。……誰だよ呼んだの」
口々に“アイツ”のことを話し出す男性陣に、佳子たち三人がこそこそしながらも色めき立つ。
でも、みんなアイツ狙いに……って言うくらいだから、どれだけのイケメンが来るのかは私も気になるかも。
そう思いながら、ぼんやり空席を見つめていると。
「――悪い、遅れた」
遅れたわりに堂々と個室に入ってきた“アイツ”を見て、私は口を開けて固まる。
「おせーぞ」
「今お前の悪口言ってたトコだ」
男性陣に責められて苦笑を洩らすその人は、どう見ても私の上司だ。
……なんでこんなところに。