極甘上司に愛されてます
「いやー、みなさん俺のせいで食事が始まらなくて申し訳な――」
私の存在に気付いた彼が、こちらを見たまま言葉を失う。
そりゃあ、部下に自分の合コン姿なんか見られたくないよね。
でも、あれ? 編集長って合コンには興味ないんじゃなかったっけ……
「お疲れ様です……」
気まずいけれど、これ以上変な空気を続かせてはマズイと思った私は、とりあえず挨拶をしてみる。
「お前、なんで……」
「じ、事情はあとで説明します。とりあえず、席に。みなさん待ってますから」
「……ああ」
納得してない様子の編集長だけれど、私の言葉にうなずいて椅子を引く。
今日の彼の服装は、だぼっとしたジーンズにショート丈のスタジャン。その中にちらっとののぞくのはごつごつしたシルバーのネックレス。
たぶんこの中で一番ラフな格好をしているし、佳子たちの思うオトナ男子とは一番かけ離れてるんだろうけど……
「お、お姉ちゃん、だだ誰!? あのワイルドイケメン!」
興奮した様子の佳子にばしばしと肩を叩かれ、奥の女の子たち二人も編集長に見惚れている。
……うん。そうだよね、私もこの中では一番あの人が素敵だと思う。
なんて共感しつつも妹をなだめ、お酒が運ばれてきた頃に自己紹介と、それから私と編集長が上司と部下であることをみんなに明かした。