極甘上司に愛されてます


家に帰れば佳子がいる。私と編集長が合コンの後で何をしていたのか、あの子が追及してこないわけがない。

嘘をつくのは苦手だし、だからと言って本当のことを話したら、泣かずにいられるかどうかわからない。

だから、このままどこかのお店に入って、朝までの時間をやり過ごしたいけれど……

独りになるのは、怖かった。


あまりに突拍子のないお願いだからか、しばらく編集長は黙って何か考えていた。

さっき通ってきた踏切が離れた場所で鳴っていて、その音がやけに大きく聞こえることに気まずさを感じてうつむく。

そうして一本の電車が過ぎていき、辺りがまた静かになった頃。


「なら……会社にでも行くか?」


思いがけない提案が降ってきて、私はぱっと顔を上げた。

会社……そっか。その手があった……!


「行きます……!」


仕事をしていれば、きっと余計なことを考えなくて済む。
眠くなったら、少し硬いけれどソファだってある。

一気に表情を明るくした私に、彼は返したはずのジャンパーを再び差し出した。

その意味が分からずに目をしばたかせながら彼を見つめると、彼はジャンパーを開いて無理矢理私に羽織らせる。


「冷えて来たからそのまま着てろ。お前病み上がりだろ」

「……す、すいません、何から何まで。編集長は、寒くないですか?」


シンプルな英字のロゴがついた白いTシャツからのぞく筋肉質な腕を見ながら、私は尋ねる。


「ああ。涼しい方が酔いも覚めるし」

「……そっか。私は、もうちょっと酔いたいくらいです」


ひとりごとのように言って歩き出すと、横に並んだ編集長が苦笑する。


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