極甘上司に愛されてます
……ん、なっ。
なんで、また、キス……っ。
瞬きを繰り返す私の目前には、編集長の凛々しい眉、伏せられた長い睫毛。
借りている服の何倍も濃い彼の香りに包まれて、体温と心拍数が急上昇する。
私の長い髪に差し込まれた手が耳を撫でるようにゆっくりと動き、首の後ろで固定されてしまったから逃げることができない。
そうして数秒間唇を押し付けられて、一度離れた……と思ったら、彼は最後に優しく私の上唇を啄んで、それからやっと、小さく音を立てて濡れた唇は離れて行った。
首の後ろにあった手も、同時にふっといなくなる。
「……行くか」
行くか……って、え?
今のキスの説明は……!?
「ま、待って下さい……!」
私に背を向け会社に入っていこうとする彼を、思わず呼び止める。
「ん?」と短く言って振り向いた表情には、動揺も、さっきまでの甘さもない。
「い、今のは……慰めですか? それとも同情?」
思い当たるキスの理由はそれくらいしかない。だからといって、そんな気持ちで唇を奪われることにいい気はしない。
一緒にいてほしいと頼んだのは私だけど、こういうことをしてもらいたいと思ったわけじゃないのに……
編集長は長い脚でゆっくりと私の方へ戻ってくると、ぼんやりと空を見上げて言う。
「あんまり綺麗だったから」
……まさか、夜空が綺麗だったからって言いたいの? そんな理由、納得できるわけが――
「ーー星を見るお前が」