極甘上司に愛されてます
『……そういうとき、俺を頼っていいですよ』
『え? ……でも』
『仕事をしているあなたの目に惚れたんです。だから、仕事が一番で構わない。けど、疲れてる時、悩んでる時、不安な時……留美さんが弱みを見せられる相手になりたいんです』
そんなことを言ってくれた人は初めてだと留美は俺を珍しがり、けれど素直に嬉しいと、俺を受け入れてくれた。
留美との付き合いは順調で、仕事との兼ね合いも上手くやっていたと思う。
交際が五年目に入った頃、留美は店のチーフを任されるようになり、俺は俺で定年退職した編集長の後任となることが決まっていて。
このまま二人で歩み続ける未来をごく自然に思い描いた俺は、留美にプロポーズをした。
返事は、もちろんイエス。
留美との結婚生活――それを思うと仕事へのモチベーションも上がったし、今までにない責任感も湧いた。
留美の方も、仕事と私生活との割合をあまりとやかく言わない俺との関係はベストだと言ってくれていたから、結婚生活には何の心配もなかった。
自分の両親や、菊爺と文子さんがつかめなかった幸せ……自分はそれを手に入れて見せる。
そんな気持ちを強く抱いていたある日、俺は実家の両親と久々に連絡を取った。
――結婚相手として、紹介したい人がいる。
そのために時間を作ってくれと頼む電話だった。