俺様富豪と甘く危険な恋
長い足を際立たせるブラックジーンズに長めのグレーの薄手ニット。その下は黒いTシャツ。その上、暗めのサングラスをかけている蓮はどうみても観光客には見えない。

クルーザーにシャンパン。そんな姿を想像してしまう。

そんなステキな人が今栞南の手を握り、隣を歩いている。ただ、今の栞南には不満があった。


「外へ出たのにブスったれてないか?」

「ブスったれてなんかいません」

「いや、この頬が膨らんでいる」


遊歩道から砂浜を歩き、立ち止まった蓮は栞南の両頬をむぎゅっとつまむ。


「い、いらい……です」


それほど痛くはない。こんなスキンシップにも胸をときめかせてしまう。


「もともとのお肉です」


つままれた頬を両手で擦ると、蓮は口元を上げて笑っている。


(笑っているけれど、ちゃんと朝日奈さんの目を見たいんだよね)


栞南は背伸びして蓮のサングラスに手を伸ばした。


「いきなりなにするんだよ」


栞南の行動にあっけにとられている蓮。

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