俺様富豪と甘く危険な恋
「さてと、行きますかっ。空港でお土産買いたいし」


まだ何も香港のお土産を買っておらず、北海道の実家の両親に何か買っていきたかった。

くるっと出口の方を向いた時、驚くことに表情が見えない黒いサングラスの冠婚葬祭のような黒いスーツを着た男3人が栞南の目の前に立った。

体格のよいサングラスをかけた男たちに目を丸くして固まってしまう。


(ここって、女子トイレだよね?)


「あ、あの、ここは女子の……」


日本語が通じるかわからないが、栞南は恐る恐る言葉にした。

そこへスッとサングラスを外したひとりの男性に「ミズ カンナ ミズノ?」と丁寧に聞かれる。

その丁寧さに栞南は思わず素直に「は……い……」と答えていた。

次の瞬間、後ろから羽交い絞めされる。


「っ……いやっ! なんなのっ!?」


(どういうこと? この人たち誰なのっ?)


栞南の脳裏に浮かんだのは香港マフィアの文字。


「離してっ! キャ――……!」


羽交い絞めにされながらも足をバタバタさせていると、別の男がポケットから白いハンカチを出して栞南の鼻と口を塞いだ。

その匂いを思いっきり吸ってしまうと、栞南の意識はそこで途切れた。

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