俺様富豪と甘く危険な恋
「はい。どうぞ」


ベンチに並んで座ると、アメリカの銘柄のビールを渡される。


「朝日奈さんはこんな風に飲んだことがありますか？」

「いや、ないな」


そう答えながら蓮は缶のプルトップを開けた――瞬間――

プシュ――！

蓮の顔にビールの泡と液体が勢いよくかかる。

栞南は蓮の慌てた顔を期待していた。

栞南にいたずら心が芽生え、レジで会計を済ませてから出てくる間に思いっきり振って蓮に渡したのだ。

蓮は栞南の期待した通りの慌てた顔にはならず、一瞬あっけにとられただけだった。

ビールだらけの顔でじろりと子供みたいに笑っている栞南を見る。


「これが目的だったんだな？　飲みたいと言うからおかしいと思っていたんだ」


予測して少し離れていた栞南は申し訳なさそうな笑みを浮かべている。


「ごめんなさい。振りすぎちゃったみたいです……」


思ったよりも蓮の濡れ具合がすごい。水も滴るいい男。だけど、顔に泡も付いていて笑える。

くすっと堪えていた笑いが出てしまう。


< 124 / 369 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop