俺様富豪と甘く危険な恋
「こんなところで寝たら身体が痛くなりますよ」

「栞南……」


(栞南の様子を見ているうちに眠ってしまったようだ)


蓮はイスから立ち上がった。


「どうした? 痛むのか? 腹も減っているだろう?」


時刻は2時を過ぎていた。


「腕が少し痛くて……」

「ああ、痛み止めをもらってあるよ」


蓮は栞南をベッドに座らせると、サイドテーブルに置かれた小さな瓶を開けて2錠取り出した。ミネラルウォーターのペットボトルもグラスも用意している。

蓮は栞南の手のひらに薬を2錠置くと、グラスを持たせた。

栞南は水で薬をごくんと流し込む。


「すごく痛むのか?」


蓮の心配そうな瞳を見て、栞南は首を横に振った。


「すべて俺のせいだ。すまない」

「朝日奈さんのせいじゃないです。事の発端は私だから、謝らないでください。このことがなければ朝日奈さんは優秀な人材をこんな形で失うことはなかったのに……」

「今までは優秀な男だったが、自ら地に貶めたんだ。そういう男は、今はなかったとしても、これから先問題を起こすだろう」


そういう蓮だが、栞南から見てどことなくいつもの様子と違う。

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