俺様富豪と甘く危険な恋
「駐車場で待ちかまえられていて気づかなかったんだ。振り返ったときに脇腹を切られてね」

「ひどい……」


栞南は息を呑む。


「傷はそれほどじゃないんだ。抗生物質が効かずに熱が出ただけだから心配することじゃない」


目と目が合うと思わず熱を確かめたくなり栞南は手を伸ばす。今度は栞南が触れても動かない蓮だ。


「まだ熱いです。早く寝てください」

「わかってくれたか? 栞南は俺が大事に思う女だ。だから心配をかけたくなかったんだ。好きな女には弱いところを見せたくないんだ」

「朝日奈さん……そう言ってくれてうれしいです」


栞南は小さく微笑む。蓮の痛みと熱を思うと最大限に喜べない。


「もう休んでください」

「ここで寝る」

「ダメです!」


栞南は即座に断ると、蓮は不満げな表情になった。


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