俺様富豪と甘く危険な恋
全身の血が足に下がるような感覚に襲われながらも、今が逃げるチャンスだと朦朧とする頭で考えている。

栞南はよろめきながらドアノブを掴むと、ドアを開けた。

大きくドアを開けた栞南が目にしたのは、テーブルを囲むようにソファに座る黒ずくめの男たちだった。


「あ……」


栞南の姿を見た瞬間、俊敏にソファに座っていた男たちが立ち上がる。

栞南はもう逃げられないと悟った。気分が悪くその場にヘナヘナと座り込む。

心臓が破裂しそうなほどの恐怖。

ソファからひとりの男が栞南に近づいてくる。足音は絨毯に吸収されてまったくせず、静寂がさらに栞南の恐怖心を煽る。


(殺される!)


栞南の荒い呼吸しか聞こえない。

気を失えるものなら失いたい。しかし、こみ上げる吐き気と眩暈に襲われるだけで、意識はしっかりしている。


「レン様、大丈夫ですか? 顎が赤いですよ」


背が高く浅黒い男は九龍駅のレストルームで栞南の名前を確認した男だ。その男が栞南の後ろにいる男性に声をかける。

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