俺様富豪と甘く危険な恋

キスの拒絶

食事を終えた蓮はダニエルとボディーガードを連れて仕事に出かけようとしていた。

栞南は玄関まで見送りに出る。


「いってくるよ」

「はい。いってらっしゃい」


ピカピカの革のビジネスシューズを履いた蓮の顔が傾き、栞南の唇にキスが落とされようとした。だが栞南はスッと顔を背け、蓮の唇がピンクの頬をかすめる。


「栞南？」


キスを拒否された蓮は訳が分からないと、栞南を見つめる。


「ごめんなさい……ここでは……」


リーに言われた言葉がいつも胸のどこかに残っていた。


『俺たちの前でイチャイチャしやがって』


リーの吐き捨てた言葉を思い出し、思わず首を横に振る。


「レンさま」


栞南を見つめる蓮に、先に玄関を出たダニエルが催促する。


「いってくる」


栞南の気持ちがわからない蓮は突然変わった態度が不思議でならない。


「はい……」


にこりともせずに出て行った蓮に栞南は気を悪くさせてしまったと、肩を落とす。


（戻ってきたらちゃんと言わなきゃ）