俺様富豪と甘く危険な恋

事件の進展で

「来週の月曜日にイギリスで大事なオークションがあるんだ。まだジャスティン・ラウが捕まっていないだろう。お前をここに置いておくことも、日本へ返すこともできない。俺と一緒にロンドンへ行ってほしい」

「朝日奈さん……」


(私がイギリスに……?)


「イギリスは何日間の滞在ですか?」

「最低1週間だ」


(今週末に日本に戻らないと、会社に残れないかもしれない……)


いくら盲腸で手術したとしても半月の休暇は多過ぎだろうと、栞南は今週に入ってから焦っていた。

その反面、日本へ戻る時が蓮とのお別れだ。彼がそばにいないことに耐えられるのだろうか。

複雑に揺れる栞南の心だった。


「栞南?」


命がまだ狙われているのかもしれないのだから、蓮は「行く」という返事がもらえるものと思っていたが、栞南の困惑の表情に眉根を寄せる。


「私……」

「イギリスへ行きたくない?」

「……ごめんなさい。1週間もイギリスに行っていたら、会社に戻れなくなってしまうから」

「会社か……」


蓮は栞南が勤め人であることを思い出した。

栞南を日本へ返せるのか……栞南と離れることを考えると身を切られるような痛みを覚える。




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