俺様富豪と甘く危険な恋
食べやすいように身が甲羅にほぐされている。それを刻みしょうがの入った黒酢で食べると上海ガニの甘みが味わえ美味しい。


（ここにいる間にすっかり贅沢になっちゃったな。日本に戻ったら大変そう……）


また日本へ戻ることが脳裏をよぎり、いつの間にかため息が漏れる。


「栞南、花束の持ち主を聞かないのか？」

「朝日奈さん、唐突ですね。まさか男の人から贈られるわけじゃないし、女性からですよね。大丈夫です。気にしていませんから」

「ただの見舞いの花束だ。しかし、気にしないと言われると寂しいもんだな」


蓮は子供のように口を尖らして見せる。


「だって……今は……私だけでしょう……？」

「栞南……もちろん……」


栞南は口角を上げてにっこりほほ笑んだ。


「明日が楽しみです。どこへ連れて行ってもらおうかな」


栞南は話をそらし、食べることに夢中になっているフリをした。


物わかりの良い女ぶっている自分が嫌だった。でも醜い嫉妬心を出したらどうだったのだろう。今はケンカをしたくなかった。

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