俺様富豪と甘く危険な恋
「手厳しいんだな」

「朝日奈さんのためを思ってのことですっ。明日は一日中出かけるんですから」


栞南が指一本立ててビシッと言うと、蓮は端正な顔に苦笑いを浮かべる。


「……でも、一緒に寝てくれるよな?」

「えっ?」

「手は出さない。ただ抱きしめて寝るだけだ。一緒に寝られるのはあと2回しかないんだぞ」


ふたりの時間は残り少ない。その残り少ない時間を離れていたくないのは栞南も同様だ。


(出来ることならば愛されたい……)


「本当に何もしませんか?」


心とは裏腹に栞南は真面目な顔で聞いていた。


「もちろん。明日のために。でも明日の夜は……約束できないな」

「朝日奈さん……」


蓮は戸惑う栞南のグラスにワインを注ぐと、手に持たせる。


「あっ! 酔わせてどうにかしちゃおうって魂胆ですねっ!?」


注がれてグラスを口まで運んだ栞南はハタと動きを止めて蓮をにらむ。

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