俺様富豪と甘く危険な恋
「落ち着いてくれないか？　キーキー叫ばれると疲れる。お前に危害は一切加えないから安心しろ。約束する。スーツケースは部屋だ。用事が済んだらファーストクラスに乗せて日本へ帰してやる」

「えっ！？」


（私に危害は一切加えない？　どういうこと？　スーツケースもあるって？　用事が済んだら？　わからないことだらけで頭がおかしくなりそう）


「必要なのはこっちの方だ」


蓮は自分の隣に立つダニエルの持っているキャメル色のバッグを顎で示す。


「私のバッグ？　どうして私のバッグが必要なんですか？　あなた方が欲しがるものなんて入っていません！　あ！　パスポートですか？　偽造してバイヤーに売るとか？」

「お前、よくバイヤーなんて言葉知ってるな。テレビの見過ぎだ。そんな物が欲しいんじゃない」


蓮はダニエルに頷くと、栞南のバッグを逆さまにして乱暴に振られた。


「ああっ！　何するんですかっ！　ひどいっ！」


バラバラと大理石のテーブルに落ちる化粧ポーチ、パスポートにエアーチケット、財布、ガム、メモ帳にペンがテーブルに散らばる。



< 19 / 369 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop