俺様富豪と甘く危険な恋
昨晩、一緒のベッドに寝て蓮の腕の中に抱き込まれたときも、ありったけの自制心をかき集めて手を出さないようにしていると耳元でささやかれた。

栞南だって愛されたいと望んでいる。でも、やはりまだ蓮の身体が心配だった。


「知道(ジードウ)」


蓮は短く返事をするが、栞南はキョトンとなる。


「なんて言ったんですか?」

「わかった。と言ったんだ」

「ジードウ……ですね?」

「ああ。なんだ? 広東語を覚えたいのか?」


そう言う蓮の口元に笑みが広がる。好きな女が自分の血が半分混ざる国のことに興味を持つことがうれしい。


「う~ん。難しそうですよね? でも簡単な言葉ぐらいは覚えたいな」

「そうだな。ここへ来る機会も増えるだろうし」


蓮の言葉がうれしくて栞南はにっこり笑った。




中環(セントラル)の駅までダニエルに車で送られた蓮と栞南は、MTR乗り場である地下に向かっている。

オクトパス・カードを2枚購入する蓮に栞南は不思議そうな顔を向ける。

オクトパス・カードとは日本のSuicaやPASMOと同じ機能を持つ電子カードである。


「どうした?」

「朝日奈さん、オクトパス・カード持っていなかったんですね?」


栞南は差し出されたカードを受け取ると言った。

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