俺様富豪と甘く危険な恋
「ＭＴＲはほとんど乗らないんだ。年に１度、あるかないかだな」

「そうなんですかっ？」


栞南は驚いたが、すぐに納得する。


（高級車を何台も所有する人が、混雑しているＭＴＲに乗るわけがないよね）


「ほら、行くぞ」


蓮に促された栞南は日本のように改札でオクトパス・カードをタッチして通過した。


香港の地下鉄はキレイだ。ホームはガラスに仕切られ、電車が止まり、ドアが開かないとホームのドアも開かない。

ふたりはやってきた電車に乗り込んだ。香港の電車は意外と高さがなく、蓮のような長身の男性はいささか窮屈そうだ。


（頭が天井に着きそう……）


周りを見ると、蓮のような長身の男性はいない。


今日の蓮はブラックジーンズに白い薄手のニットというカジュアルな服装。

そんな爽やかな服装をしていても、栞南には初めて会ったときの蓮の印象、危険な香りのする男は変わらない。

ステキすぎて隣に自分がいることがいまだに不思議でならない。

栞南も今日は動きやすいスニーカーに合わせてジーンズとアルマーニの上質で着心地の良いブラウスを着ていた。



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