俺様富豪と甘く危険な恋
「ヴィクトリア・ピークか? この時間はラッシュ並みに混んでるぞ?」

「でも今しかないですから。ピークトラムにも乗りたいんです」


夜景の絶景が見えるところまで、マンションと崖の間を走り登っていくピークトラム。バスでも行けるが、やはり乗ってみたい。

蓮の言った通り、チケット売り場から乗り場に向かうと、長蛇の列だった。観光客の団体でごった返している。


「朝日奈さん、ごめんなさい」

「なにを謝る? お前が行きたいところが俺の望みだ」


ピークトラムの順番を待ちながら栞南は蓮の肩に寄り添っていた。

ピークトラムを待つ観光客の中にはもちろん日本人もいて、蓮を見た女の子たちが「あの人カッコいい!」などと言う声が栞南の耳にまで届く。

栞南もリッツ・カールトンのレストランで蓮を見たときのことを思い出した。


(ブラックフォーマルでビシッと決まった朝日奈さんも好きだけど、私は今の方が好き)


1時間経った頃、ようやくピークトラムに乗車できる。歩き疲れていた栞南の足も限界に近づいていた時だった。

順番が来て乗車する際に、栞南は右手のベンチに蓮を誘い座った。



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