俺様富豪と甘く危険な恋
そして今の信じられない出来事に忘れていたが、彩から預かった小さな箱が、ゴトッと音をたてて転がった。


「これだ」


蓮は緑色のリボンで包装された箱を手にして、栞南に見せる。


「それはダメです! 人から預かったものなんです!」


栞南は腰を浮かして蓮から箱を取り上げようとしたが、素早く避けられその手が空を切る。


「これは星野彩から預かったものだろう?」


箱を取れなくて悔しい顔をしている栞南に蓮は小さく鼻で笑った。


「どうして彩の名前を?」

「彩は仲介人で、本当の持ち主は本田雄二だ」


ふたりの名前を言われて、呆気にとられる。


(どうしてこの人がふたりの名前を?)


「あなたは彩たちの友人なんですか?」

「奴らの友人じゃない。そんなことを口にしただけで虫唾が走る」


蓮は端正な顔を歪め、不機嫌そうに言い放つ。彼らに嫌悪感があるようだ。


「どうやら本田の正体を知らないでこれを受け取ったようだな。そんなことだろうと思ったが」

「奴ら呼ばわりするなんて、いったい彼らが何をしたんですか!? 私はそれを日本にいる友人に渡すようにって。その人が誕生日なの。中身の翡翠が壊れないように私が持って帰るんですから返してください!」


栞南は箱を弄ぶ蓮に手を伸ばしたが、渡してくれない。それどころか緑色のリボンをするっと外し、包装紙をビリビリに破き始めた。

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