俺様富豪と甘く危険な恋
「も、もう……」

「……これに乗るのも何十年ぶりだな」

「えっ? デートスポットとしても最高の場所なのに、来なかったんですか?」


思わず聞いてしまう栞南だ。


「それは内緒にしておくよ」

「どうしてですか? 言ったらすねると思っているんですか? 言ってくれない方がすねちゃいますよ?」

「これに乗らなくても車で近くまで行けるからな。それにこんなに混雑している乗り物に乗りたくないと思う女の方が多いんだ。だから栞南は俺にとって珍しい存在だ」


急勾配を上っていくピークトラムは座っていても身体が斜めになる。

栞南は蓮の言葉が気になって、せっかく眺めの良い右側に座ったのだが左隣の蓮が気になって仕方ない。


「貧乏性の女性は今までいなかったんですね?」

「貧乏性と言うな。そういう意味じゃない。好奇心旺盛でなんでも見たがる女は周りにいないんだ。長時間一緒にいて退屈しない女は栞南だけだ」

「朝日奈さん……」


(とりあえず褒められているんだよね?)


褒められてくすぐったい気持ちで、顔がにやけてしまうのを止められないでいると、最終地点に到着したピークトラムがガタンと大きく揺れた。

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