俺様富豪と甘く危険な恋
◇第5章◇

別れの朝

中環(セントラル)のオフィスにいたダニエルは20分ほどで迎えにやってきた。


「珍しく長いデートでしたね」

「ああ。いろいろ回った」

「それはそれは。楽しそうでよかったですね」


後部座席のドアを開けたダニエルは蓮をからかう。

蓮は栞南を先に乗せてから続いて座る。後部ドアが閉められ、ダニエルが運転席に戻ってきた。


「ダニエルさん、お迎えすみません」


エンジンをかける前に栞南は申し訳ないと伝えると、バックミラー越しにダニエルは微笑んだ。


「明日の日本行の便は何時だ?」

「8時40分発のキャセイ航空です。日本到着は13時25分です」

「そんなに早いのか? もっと遅い時間はなかったのか?」


朝の8時40分と聞いた栞南は車内の時計に目を走らせた。


(今が20時10分……あと12時間しか一緒にいられない……)


「ファーストクラスはこの便しかなく、レン様も昼の便ですし、彼女を残したまま出発するのも嫌だろうと」

「確かにそうだが……」


蓮は隣に座る栞南を見る。悲しそうな目が薄暗い車中でもわかり、蓮は膝の上に置かれた栞南の手を握った。

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