俺様富豪と甘く危険な恋
「買い物をした分が入らないだろう?」


蓮がドアのところに立ってキョトンとなっている栞南を笑う。

アルマーニで買ってくれた服や化粧品のことだ。

大きなスーツケースは栞南の好きなピンク色で今持っているものより若干薄い色だった。


「羽田に着いてから自宅までハイヤーを手配してあるから、スーツケースが2つあっても問題ないはずだ」

「ありがとう……レン」

「俺も出かける用意をしてくる」


蓮が部屋を出ていくと、栞南はジーンズとブラウスに着替え、その上に厚手のカーディガンがあとで羽織るようにベッドの上に置く。

着替え終わると残りの自分の荷物をスーツケースに詰めはじめる。もともと荷物は少ないため、それほど時間はかからない。

スーツケースに一つ一つ詰めていくにつれて、気持ちが落ち込んでくる。


(香港へ行くときにスーツケースに準備していたときが遠い昔みたい。まさかこんな出会いがあって、愛する人と出会うなんて思いもよらなかった……)


また涙ぐんでしまい、手の甲で乱暴に拭くと、お化粧をして部屋を出た。

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