俺様富豪と甘く危険な恋
「ステキな方ですよね」

「また俺以外の男を褒めるんだな?」

「だ、だって、本当にそう思ったから……一番ステキなのは……レンだから……」


恥ずかしがりながらの栞南の弁解に蓮は笑う。


「栞南の素直な気持ちが聞けてうれしいよ」


エレベーターがやってきてふたりは乗り込み1階のロビーに降りた。回転ドアを抜けてエントランスへ出ると、ベンツが待っていた。そばにダニエルが立っている。

栞南と蓮が後部座席へ乗り込むと、車は走り出した。

栞南は振り返り、窓から離れていくタワーマンションを見る。


(離れがたい場所。天后廟(ティンハウミュウ)にもう一度行っておけばよかった……)


「空港へ着くまで眠ったらどうだ?」


視線を蓮に向けた栞南は首を横に振る。


「飛行機で眠れるから……」


栞南は蓮の手に手をのせると、ぎゅっと握り返される。

心地よい揺れと振動で一睡もしていない栞南は眠くなるはずだが、そうならない。

一種の興奮状態なのかもしれない。


(胸が痛い……このまま時間が止まってしまえばいいのに……)

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