俺様富豪と甘く危険な恋
「水野さん、すっかり良くなったの? なんとなくいつもと違う感じがするわ」


女の感というやつだろうか。神田りさ子の鋭い指摘に栞南は内心驚いた。


「長くお休みしてしまいご迷惑をおかけしました。帰りがバタバタしてしまってお土産買ってこられなかったんです。すみません」


会社へのお土産を買うのをすっかり忘れていた栞南は謝る。

そこへ社員たちが出社してきていろいろと話しかけられたが、栞南はあたりさわりない話で済ませた。

半月前の蓮を知らなかった日常生活がやってきた。

昼食時間になり、同期である総務課の仲野美羽(ナカノミワ)にランチに誘われる。


「もう何でも食べていいの?」

「え? あ、うん……」


オフィスを出て何を食べようかと話していると、美羽に聞かれ一瞬戸惑う栞南だ。


「昨日帰ってきたんでしょ? 和食にしようか。和食は久しぶりじゃないの?」

「そうだね。いつものところにしようよ」


近くに個人経営の和食店がある。

2階建ての古い民家で座席数が少ないせいかいつも混んでいる。


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