俺様富豪と甘く危険な恋
「あら、栞南ちゃん、大変だったねえ～」


店に入ると常連の栞南に店主の奥さんはまっさきに話に来る。

ここでも香港で盲腸になったと知られており、栞南は驚く。


「ごめん。私が話したの。栞南が最近来ないねって言われてさ」

「ううん。いいの」


栞南は笑みを浮かべた。


（こうなったら美羽にも嘘を突き通すしかない。数日もすれば話題にする人もいなくなるだろうし）


「おばちゃん、銀むつの煮つけ定食ください！」

「はいよー　栞南ちゃん、銀むつ好きだねぇ」


美羽も同じメニューを注文すると、おばさんは別のお客様の席へ注文を取りに行った。

温かいお茶を飲みながら待っている間に、栞南はバッグからスマホを取り出した。勤務中は見られないから昼休みになるのが待ちきれなかった。

スマホを見てみると、蓮からのメールや着信はない。がっかりしてスマホをバッグにしまう。


「どうしたの？　ため息ついて」


スマホをバッグにしまう栞南の口からため息が出ていたようだ。美羽に聞かれて不自然に首を横に振る。


< 218 / 369 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop