俺様富豪と甘く危険な恋

しだいに募る不安

「おはようございます」


すでに出社している社員に誰ともなく挨拶をして、自分のデスクに向かった。

昨日、課長に頼まれた冨士田食品関連の仕事に一日かかった。

忙しくしていた方が蓮を恋しく思い出さなくて済んだ。



その日の夜、美羽に飲みに行こうと誘われて会社近くの居酒屋へ行くと、にぎやかな7人ほどの社のグループがいた。

その中に孝太郎もいて、栞南は回れ右して引き返したくなる。

今朝、男を紹介してやると誘われたが、栞南が断ったのでこちらに参加したのだろう。

ポツポツと空いていた2つの席のうち、美羽は同じ総務課の先輩に手招きをされて先に座ってしまった。

残る1つは営業課の今田仁志(イマダ ヒトシ)主任と孝太郎の間の席だ。

しかたなく栞南はその席に向かった。


「お! 水野くん、大変だったんだってね」


この中で一番年長で妻帯者の今田主任が栞南の顔を見て声をかける。すでにビールを飲んでいて顔が赤らんでいる。


「今田主任、お疲れさまです」


今田主任は気軽に話が出来る人で気が楽だが、隣は孝太郎。

しかし他に空いている席はない。



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