俺様富豪と甘く危険な恋
胸がつぶれそうなほど痛い栞南は香港での出来事、蓮を愛したことを優香にぽつり話し始めた。

話している間は香港でのことが思い出されて少しだけ幸せを感じたが、蓮のこととなると涙が堪えられず、やっとの説明だった。


「……すごいことがあったんだね。まるで映画みたい」


栞南からすべて話を聞いた優香の口から深いため息が漏れる。


「……うん。ほんと、ありえない話で……」


栞南は優香が淹れてくれたホットチョコレートから出る湯気を見つめる。


「でもさ、そのレンって人、栞南を弄んだだけじゃないのかな」

「優香っ!」


親友の言葉に栞南は驚いて目をみはる。


「ごめん。ひどいことは言いたくないけど、栞南を日本へ帰せてせいせいしていると思うよ。そうじゃなかったら連絡くれるはずじゃん?」

「……そうなのかな……でも、『会いたい』ってメールくれたんだよ?」


蓮のことを悪く思いたくない栞南は必死だ。


「そんなのリップサービスだよ。栞南のバージン美味しくもらっちゃったわけだし。そんな男のことで泣くなんてもったいないよ。忘れちゃいな」

「そんなっ!……忘れられないよ……」


優香が正しいのだろうか……栞南はそう思いながらも蓮を信じたい。遊びだったと思いたくない。

栞南はうなだれた。

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