俺様富豪と甘く危険な恋
「騙されたんだよ。早く忘れた方がいいよ」

「騙されたんじゃないよ」

「言ってるそばからそんなことをっ！　騙されたんだよ。栞南は騙されやすいの。考えてもみなよ。会社のオトコ、孝太郎だっけ？　二股かけられたし、星野彩にも香港で騙されて危ない目に遭ったんじゃん」


強く言う優香にわけもなく苛立ちが増してきた栞南は、ガタンと乱暴にキッチンスツールから立つ。


「もう寝る！　おやすみ！」


栞南はテーブルの上のスマホを鷲掴みにすると、呆気にとられる優香を残し自室へ戻った。


（優香の言っていることが正しいのかもしれない。だから……こんなに苛立つの……？）


ベッドにドスンと腰を下ろした栞南は頭を抱えた。


「優香に悪いことしちゃった……帰国した日に……」


ポツリ呟く栞南はハッとなる。日本へ帰ってくるなどメールでも知らされていない。なぜ突然優香は帰ってきたのだろうか。

気になりはじめて、栞南はおそるおそるドアを開けてみると、ダイニングキッチンからラーメンの美味しそうな匂いが漂ってきた。

お箸を用意していた優香は栞南が部屋から出てきたのが見えてごまかすような笑顔になる。

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