俺様富豪と甘く危険な恋
◇第6章◇

再び香港へ

数時間後、香港九龍(クーロン)駅に栞南は到着した。晴れていたが少し肌寒い。


(この国へ来るとホッとするのはなぜだろう)


その国独特の匂いとか空気があり、合う、合わない、好き、嫌いがある。

栞南の場合は愛している人がここにいるせいだろうか。

栞南はバッグからスマホを取り出し、ダニエルに電話をかける。だが、呼び出し音はなるものの、いっこうに出ない。


「出ないか……直接タワーマンションへ行こう」


栞南は電話を切って、MTR(地下鉄)で香港島の中環(セントラル)駅に向かった。

タワーマンションの所在地はレパルスベイ。中環のバスターミナルからバスに乗って30分ほどのところだ。

もうすぐ蓮に会えると思うと、うれしさと不安で胸の高鳴りは止まることを知らずずっと暴れていた。

もうすぐ中環というところで、手に持っていたスマホが震えた。ハッとして着信を見るとダニエルだった。まだ車内にいるから出るわけには行かない。栞南は振動するスマホを見つめながら、切れないでと強く思う。

MTRが中環のホームに滑り込んだ時、栞南の願いもむなしくスマホの振動が止まってしまった。

< 244 / 369 >

この作品をシェア

pagetop